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SHACKLES~枷~ 著者:狗守 暁弥
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04.27.06:10

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  • 04/27/06:10

07.28.23:30

【邂逅】

誰が好んで会いに行く物かよ

いつもながらにそう思う・・・

実に難儀な物だ

二度と会うつもりはなかったと言うのに

不本意を通り越して呆れ返る所だ

周囲の強制力にも

何より・・・

自分の浅はかさにも、な・・・




 毎度こなして行く家とそして実父の下命。修練と実戦の繰り返し、主に下命が下るのは断罪と言う名の勅だ。内容は簡素。一人残らず、余す事無く、必要と在らば一切の者を―――

 “殺せ”

 “狗”の家名を汚し害を成す一切の物を消し去り、断罪と言う名目の上で全てを灰燼と帰す事。それこそが彼、“狗斐 暁弥”に与えられた下命だった。

 またその勅の殆どは“狗”の本家、“狗神”の家から来る物ではなく、暁弥の実父より齎される物が締めていた事は暁弥でさえも熟知していた。それは安に暁弥の実父が実権を、いやそれ以外の何かを求めての物であったかは暁弥にとって不可解な事でありはしたが、大した問題ではないと割り切り、実行に移す事を暁弥は選んでいた。喩えそれが、気に食わない実父の勅であったとしてもさした問題はない、自身には何の拘わりはないと、この時は考えていたからだ。

 故に愚鈍にも暁弥はそれを実行する。

 名指された“家”を訪れ、その家人――大人・女・子供のみならず使用人に至るまで――全てを一切浄土を惨殺する。手口、と言えるべき物はない。単に小太刀一振りを持たされ、その“家”の全てを斬り殺して行くだけだ。

 時には一撃で、必要と在らば靭帯を切断し自由を失わせてから淡々とまるで無機物を壊す様に適度に致命傷を与える事で絶命、また致命傷を与えた状態で放置する事によりゆるりとした死を与える事さえ在り得た。逆に幼児には己が手で確実に息の根を止める。首を切断し、頭部を絶ち割り脳漿を撒き散らす。両手両足を切断し、全てを纏め火にかける。小太刀を失った際には、反抗してきた家人の刀や銃等の武器を取り上げ使用する事さえある。逆に素手のみで、目を抉り、喉を抉り、頚椎を砕きさる・・・ありとあらゆる手段を用いて“死”を与えて行く。それが暁弥の役目であり、実父の良しとする所であったと思われる。

 それらが非日常的な日常、そう彼にとっての日常だった。しかし・・・今回の、今日の勅は今迄の物と違っていた。不透明、且つ不可解な勅。



「赤符の間、あるモノと接触せよ・・・・・・・・・か」

 暁弥は淡々と勅の記された紙切れを一瞥し宙へ放る。

 彼が今歩むのは月明かりが怪しく差し込む回廊だ。そして彼が居るのは屋敷の――“狗”の本家、“狗神”の家の屋敷だった。大きさは凡そ10万㎡、とは言え此処は離れだと言う。離れでさえこの規模、当家は実質それ以上だと言う事だ。全くもって呆れ果てた物だ。

 歩み行く回廊に僅かな既視感。以前に一度、暁弥は此処に訪れた事が在ると感じる。迷ったか、それとも何かに釣られてか、それは既に忘れ・・・いや、憶えている。あの胸糞の悪い歌声を。

――そう言う事かよ・・・クソ親父もクソ爺共も何を考えてやがる・・・

 胸中で悪態をつきつつも足は目的の場へ赴こうと歩を進める。そうして更に数十分後――



 目の前にあるのは以前に見た紅い符の張り巡らされた障子部屋。以前と違う事と言えば符が朽ち掛けている事ぐらいだろうか?それ以外はさして違う事などない・・・後は歌声がなかったぐらいな物だ。
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