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SHACKLES~枷~ 著者:狗守 暁弥
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04.25.22:07

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  • 04/25/22:07

03.11.18:09

【荒ぶる雄】

祖は怒りであるが故に激昂


祖は激昂であるが故に忌むべき者


祖は忌むべき者であるが故に荒ぶる者である


人の世のみならず


神の世に置きても


祖は誰よりも何よりも何者よりも・・・


祖は“荒ぶる雄”である

 

 

 






 広い屋敷、割り当てられたのは立った一間の部屋。其の場で対面するは一組の少年と男。

 

 時は夕刻。赤く燃ゆる夕日が室内を障子越しに満たす。

 

少年の眼前には年若く、また非常に霜烈な、そして整った容姿、しかし瞳は異常なほどどす黒い・・・これが父だと、そう思うだけで嫌悪と憎悪と吐瀉物が込上げる様だ、と少年は心中で苦々しく吐き捨てる。

 

いや、寧ろ“これ”を父親だと言う事すら思っていないのかも知れない。単に自身を使えないと思うや塵屑や害虫の如く打ち棄て、排除する事を厭わぬ、喩え実の子息であろうが家族であろうが身内であろうが関係すら感じさせず、淡々とやって除ける事だろう。そう、これは“親”ではない・・・“鬼”だ。

 

“鬼”は決して涙を見せない

 

“鬼”は決して容赦を見せない

 

“鬼”は決して躊躇いを見せない

 

“鬼”は決して・・・“人”を赦さない

 

 

「暁弥・・・貴様、何を考えている?」

 

 “鬼”は少年を見る。其の瞳には感情のそれは見当たる影すらもない。どす黒く濁り切った溝川の其れ・・・“人”を棄てた其れだ。

 

「何も・・・只、クソ親父、テメエのツラと言葉と目玉の奥のドブクセエ色が気に食わないと思っただけだ」

 

 少年が返すべき言葉は差障りのない無駄を一切省いた返答だけだ。だが、少年は其れをしない。

 

何故なら其れさえも鬼の気には障るらしい事を少年は知っている。だから自身の思う様に応えた。当然の如く鬼は額に、眉間に、頬に、歪みに歪み、整っていた容姿を殊更に歪める。人とはかくも変容しようモノか・・・其の顔は既に人ではなく“鬼”の其れだった。

 

「暁弥、もう何度目になるか・・・口を慎めっ!

 

貴様は傀儡だ!思考も感情も自身で考え得る全ては捨て去れ!

 

 もう一度言う・・・貴様は神を宿す為だけに作られた単なる器だ。

 

 貴様は只忠実に己に従い、其の身を、其の心を、其の術を、全てを何者をも超え得る者と成り得ろ!

 

 貴様は己と時任の小娘に出来た、唯一無二の傑作だ・・・全てを憎悪し、蹂躙し、棄て去れ・・・

 

 貴様は荒神を宿すだけの器―――【荒神の器】に過ぎない!」

 

 覇気・・・いや、この鬼の宿し、発する物はそんな上等な物である筈はない。

 

 ならば何か?

 

 簡単だ。

 

 “瘴気”以外の何物でもない。

 

 未だ鬼が手を出していないとは言え其の瘴気は常人であれば気絶・・・運が悪ければ即死であろう。だが、少年には聞き慣れ、見慣れ、感じ慣れた鬼の全て・・・柳の如く涼やかに、しかし壮絶とも言い得る表情を持って其れを受け流し、受け止め、そして睨み返す。そして・・・

 

「耄碌した親父が何を言い出しやがる・・・ついにボケやがったか」

 

 当然とも言える次なる鬼の行動は決まっている。

 

 鬼は傍らに置いた刀を手に取り振るった。

 

 

 

刹那。

 

 

 

 甲高い、重々しい、そして生々しい音が数度響いた。

 

 悲鳴。

 

 しかし其れは少年の物では在り得ない。

 

 其れは・・・違う男。

 

 傍らの障子を開き、鬼へと所用を伝えに来た従者だった。

 

「か、は・・・暁、弥・・・様・・・?」

 

 少年が掴んでいたのは従者の襟首。

 

 襟首を掴んだ腕で自身のやや斜め前方へ引き摺る形で鬼へと従者を突き出し、自身は従者の身体で覆い隠れる体制へと移っていた。

 

従者は盾とされていた。

 

鬼の放つ刀の剣戟を避ける為の道具。自身の行動力と機動力を瞬時に考慮し行動した結果。幾度と言える経験故の行動。幸いだったのは、鬼の刀が抜き身でなかった事、そして加減のされていた事。不幸だったのは、打たれたのが従者だった事。理由は言わずもがな・・・鬼の剣戟は従者の両肩口、鳩尾、眉間を打っていた。剣戟の後は凄まじい。服は肩口に減り込み、鳩尾は半ば以上陥没し、眉間は当然砕かれ、眼球が飛び出していた。これが不幸。

 

少年の表情は実に冷め切っていた。盾とした従者の事など微塵も気にした様子はない。早々に邪魔だとばかりに傍らへ放り捨てる。

 

「貴様・・・調子に乗るな、小童風情がっ!」

 

 鬼は更に激昂し追撃。

 

しかし、これを少年は避ける事はしない。

 

「っぐ・・・!」

 頬への一撃に少年は微かに声が漏れる。

 が、従者の様に其の場へへたり込む事も、況してや屈服の表情を浮べるでもない。

 寧ろ、鬼を意に介さない様子で冷やかな視線を送る。

 そして其の表情は鬼の怒りを逆撫でする事となる。


「オノレ、オノレオノレオノレェェェエエイ!

 

 暁弥!貴様は己のモノだ!逃げる事は罷り成らんぞ!

 

貴様の運命からも、貴様の実の父である己からもなぁっ!」

 延々と続く一方的な暴力・・・

 

 其の場には只只、激昂し憎悪に荒れ狂う鬼と其の激昂を受け止める事となった少年のみが残る事となった。延々と続く怨嗟と憎悪の言葉、そして激しい打撃音、これを鬼と言うのであろう。

 少年は悲鳴を上げる事無く、只只鬼の声のみが夜半まで止む事はなかった・・・

 

 

 

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